店舗の万引きや自宅前の不審な行動が録画されると、注意喚起や情報提供のためSNSへ投稿したくなるかもしれません。急いで知らせたい場面ほど、公開前に立ち止まる必要があります。
自分の判断で不特定多数へ公開せず、まず元映像を保存してください。顔を隠しても、服装、場所、時刻、音声、投稿文の組み合わせから本人が分かるおそれがあります。
事件・事故が進行中なら110、緊急でない警察相談は#9110か最寄りの警察署が目安です。公開の法的評価や、投稿後に相手から連絡が来た場合は、映像と経緯を持って弁護士へ相談します。
防犯カメラ映像はSNSへ投稿せず、元データを保存する
注意喚起が目的でも、SNS公開は映像を必要のない人にまで広げます。第三者が保存して再投稿すると、投稿者が削除しても拡散を止め切れない場合があります。
映像を証拠として役立てたいときは、公開用に加工するより先に、元データと撮影前後の情報を残します。最初の行動は次の3段階です。
- SNSへの投稿やグループへの転送を止める
- 元映像を別媒体へ保存し、撮影日時と場所をメモする
- 緊急性と目的に合わせて警察や弁護士へ相談する
上書き録画を使っている場合は、必要な時間帯の前後も含めて早めに保存します。切り抜きやモザイクを作る場合も、編集していない元映像は別に残しておきましょう。
SNS投稿で問題になりやすい3つのポイント
防犯カメラの設置に問題がない場合でも、録画映像を外部に公開してよいとは限りません。設置と公開では、目的も情報が届く範囲も異なります。
顔や特徴から本人が分かる映像
顔が鮮明で、特定の個人を識別できるカメラ映像は、個人情報に当たり得ます。映像を広く公開すれば、プライバシーや肖像をめぐる問題につながる可能性もあります。
画面内には、行為をした人以外の来店客、通行人、家族、車両も映り込みます。注意喚起したい対象だけでなく、周囲の第三者まで公開されないかを確認します。
「犯人」などの断定コメント
映像だけでは、前後の行動や本人の事情まで分からないことがあります。「犯人」「泥棒」などと書けば、映像に加えて投稿文がその人の社会的評価へ影響します。
注意喚起の意図があっても、名誉やプライバシーをめぐる評価は投稿目的だけで決まりません。警察の確認前に、犯罪をした人だと決めつけて発信しないことが重要です。
モザイク後も残る場所・時刻・音声
顔を隠していても、投稿文・場所・時間帯・服装などの情報が重なると、特定の個人を識別できてしまいます。車の特徴、声、会話、行動経路も手掛かりになります。
自治会、学校、職場、近隣の連絡グループでは、参加者が地域事情を知っています。公開人数が少なくても、わずかな特徴から本人が分かることがあります。
次のような投稿は避け、元映像を保全したうえで相談へ切り替えます。
- 顔や車両番号が見える映像を、そのまま不特定多数へ公開する
- 確認前の人物へ「犯人」「泥棒」などの断定を付ける
- モザイクだけで安全と判断し、場所や時刻を同時に書く
- 限定グループなら問題ないと考え、本人が分かる映像を転送する
個人情報保護法は家庭と店舗・団体で見方が異なる
個人情報保護委員会は、特定の個人を識別できる映像は個人情報に当たり得るとしています。ただし、カメラ映像が直ちに「個人情報データベース等」になるわけではありません。
録画日時で探せるだけなのか、特定の人の映像を検索できるよう整理しているのかで、法律上の扱いが変わります。顔の有無だけでなく、誰がどのように映像を管理しているかも確認します。
また、一般家庭が私的に使うカメラと、店舗・会社・自治会・マンション管理組合などの運用では、法の適用関係が同じとは限りません。非営利の団体でも、条件によって個人情報取扱事業者に当たり得ます。
家庭利用で事業者向けの義務がそのまま当てはまらない場合でも、プライバシー、肖像、名誉をめぐる問題は別に残ります。「個人情報保護法の対象外なら自由に公開できる」とは考えないでください。
投稿前に確認する6項目
公開の危険は、顔の有無だけでは判断できません。映像と投稿文、公開先を一緒に見て、本人や第三者が特定される情報を洗い出します。
- 顔・体格・服装から本人が分からないか
- 車両・持ち物・行動経路が手掛かりにならないか
- 建物・道路・店内から場所が分からないか
- 撮影日時・投稿時刻から行動が推測されないか
- 音声・会話・通知音に個人情報が含まれないか
- 投稿文・ハッシュタグ・公開範囲が特定を助けないか
1項目でも判断に迷うなら、加工を重ねて投稿する方向ではなく、公開を止める方向へ戻ります。映っている本人の同意がある場合も、公開先、期間、目的まで同意の範囲を確認します。

SNSではなく警察・弁護士へ映像を渡す手順
判断点を先に確認します。防犯目的で取得した映像を、相談や手続きに必要な相手へ必要な範囲で渡すことと、SNSで広く公開することは性質が異なります。依頼元と目的を確認して進めます。
緊急時は110、相談は#9110
事件・事故が進行中、けが人がいる、すぐに警察官の対応が必要という場面は110です。緊急ではない不審情報や生活の安全に関する相談は、#9110か最寄りの警察署を使います。
110番通報後、警察から映像送信の案内があれば、その指示に従います。警察庁の映像通報システムでは、案内を受けた通報者が、あらかじめ撮影した映像等を送れる場合があります。
公開してよいかの法的評価、損害賠償を求められた場合、投稿先から削除し切れない場合は、投稿内容と連絡記録をそろえて弁護士へ相談します。
元映像を残し、求められた範囲で渡す
相談時は「何が映っているか」だけでなく、データがいつ上書きされるかも伝えます。警察等から提供を求められたら、対象日時、範囲、形式、受け渡し方法を確認してください。
編集していないデータを別媒体へ複製し、上書きから守ります。必要な場面の前後も残します。
撮影日時、場所、発見時刻、見聞きしたこと、カメラ時刻のずれを記録します。
緊急性、相談目的、元映像の保存期限を伝え、提出方法の指示を確認します。
提供先、担当者、日付、対象範囲、ファイル形式、返却や削除の説明をメモします。

警察への提出形式や、SDカードをそのまま渡してよいか迷う場合は、次の記事で準備と確認順を整理しています。
すでに投稿したときは拡散を止めて記録を残す
問題に気づいたら、新しい投稿や再投稿をやめ、公開範囲をこれ以上広げないようにします。すでに出した投稿は、次の記録を残してから非公開・削除を進めます。
投稿URL、投稿日時、公開範囲、本文、画像、共有数、相手から届いた連絡を保存します。投稿を削除しても、第三者による保存や権利をめぐる問題まで消えるとは限りません。
相手から削除や損害の連絡が来た場合は、公開の場で反論を重ねず、記録を持って弁護士へ相談します。名誉やプライバシーに関する相談先が分からないときは、法務局の人権相談も選択肢です。
削除後に別アカウントへ上げ直したり、証拠を消す目的で元映像を削除したりしないでください。拡散停止と証拠保全は分けて考えます。
まとめ|公開より証拠保全と相談を優先する
防犯カメラ映像は、顔にモザイクをかけただけで安全に投稿できるとは限りません。服装、場所、時刻、音声、投稿文、公開範囲まで重なると、本人や第三者が特定されるおそれがあります。
まずは通報や相談を先行させることが、自分を守ることにもつながります。元映像と経緯を残し、緊急時は110、非緊急の警察相談は#9110か最寄りの警察署、法的判断は弁護士へ進めましょう。

