防犯カメラを選ぶとき、「何メガピクセルあれば人物を特定できるのか?」と悩んでいませんか。
カタログには「4K高画質」「800万画素」といった数字が並びますが、実はメガピクセル(MP)の数値だけでは人物特定の可否は判断できません。
なぜなら、実際に人物を識別できるかどうかは、被写体に割り当てられる「ピクセル密度」と「撮影条件」で決まるからです。
この記事では、画質選びで失敗しないための本質的なポイントを分かりやすく解説します。
もくじ
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人物特定を左右するのは「MP」ではなく「PPM」
防犯カメラの画質を考えるとき、多くの人が「メガピクセル」に注目します。しかし、人物特定において本当に重要なのはPPM(ピクセル・パー・メートル)です。
PPMとは、撮影範囲1メートルあたりに何ピクセルを割り当てられるかを示す指標のこと。
例えば、同じ4MPのカメラでも、2メートル幅を撮影する場合と10メートル幅を撮影する場合では、人物に割り当てられるピクセル数がまったく異なります。広い範囲を撮れば撮るほど、一人ひとりの顔に使えるピクセルは減ってしまうのです。
国際規格IEC 62676-4では、人物特定には最低250PPM程度が必要とされています。つまり、何MPのカメラを選ぶかより、「設置距離と画角で、必要なPPMを確保できるか」が重要なのです。
「誰か分かる」と「顔認証できる」は別レベル
一口に「人物特定」といっても、求めるレベルによって必要な画質は大きく変わります。
一般的に、防犯カメラにおける人物特定は以下の2段階に分けられます。
目視での識別(Identification)
録画映像を見て「この人は〇〇さんだ」と判断できるレベル。業界標準では250PPM前後、顔の幅で40ピクセル程度が目安とされています。
顔認証システムでの照合(Validation)
AIによる自動顔認証で本人確認を行うレベル。こちらは500PPM以上、顔幅80ピクセル程度が必要です。
メーカーによっては、カタログで「人物特定可能」と表記していても、どちらのレベルを指すのか明記されていない場合があります。導入前に、自分が求める識別レベルを明確にしておくことが重要です。
条件別・必要MP数の考え方
では、実際に何MPのカメラを選べばよいのでしょうか。具体的な状況ごとに考えてみましょう。
| 設置場所 | 撮影範囲の目安 | 推奨MP | 備考 |
|---|---|---|---|
| 店舗入口・レジ周辺 | 幅2〜3m程度 | 2〜4MP | 短距離なら低MPでもPPM確保可能 |
| 屋外駐車場(全体監視) | 幅10m以上 | 全体用は低MP+人物特定用に別カメラ | 広角では人物特定は困難 |
| 顔認証ゲート | 幅1m程度・至近距離 | 4MP以上 | 500PPM・80px/face確保が必須 |
屋内の入口やレジ周辺なら、撮影範囲が狭いため2〜4MPでも人物特定に必要なPPMを確保できます。
一方、屋外や駐車場を広範囲で撮影する場合、1台のカメラで全体監視と人物特定を両立させることはほぼ不可能です。メーカー資料でも、全体把握用のカメラと、出入口など重要箇所専用の高画素カメラを分けることが推奨されています。
顔認証システムを導入する場合は、さらに高いピクセル密度が求められます。ベンダーの技術要件を事前に確認し、500PPMを満たせる設計にする必要があります。
画質以外の落とし穴|距離・光・圧縮
どれだけ高画素なカメラを選んでも、以下の条件を見落とすと人物特定に失敗します。
設置距離と画角
高画素でも、被写体が遠すぎたり画角が広すぎると、顔に割り当てられるピクセルが不足します。設置位置の選定がカメラ選びと同じくらい重要です。
夜間・逆光条件
低照度や逆光下では、規格上のPPMを満たしていても、ノイズやブレで識別できないケースがあります。最新の国際規格IEC 62676-4:2025では、こうした現実条件も考慮されています。
録画時の圧縮設定
カメラの性能が高くても、録画時のビットレートや解像度設定が不十分だと、圧縮によって顔の細部が失われてしまいます。カメラ性能=録画品質ではないことを忘れずに、録画設定も確認しましょう。
業者に依頼する際の正しい伝え方
防犯カメラの設置を業者に依頼する際、「4Kカメラをつけてください」だけでは不十分です。
業者に伝えるべきは、「どこで、何メートル離れた場所にいる人物を特定したいか」という具体的な条件です。
例えば「店舗入口から3メートル、幅2メートルの範囲で来店者の顔を識別したい」といった形で伝えることで、業者は適切なカメラと焦点距離を提案できます。
もし「とりあえず高画素」といった提案をされた場合は、PPMや設置条件について質問し、根拠を確認することをおすすめします。高解像度カメラは機器費用だけでなく、ストレージや回線負荷も増大するため、必要な箇所だけ高画素にする方が費用対効果は高くなります。
まとめ:数字より「条件」で選ぶ
防犯カメラで人物特定を確実に行うには、メガピクセルの数値だけでなく、撮影範囲・設置距離・ピクセル密度の関係を理解することが欠かせません。
4Kや8MPといった高画質でも、画角や距離の条件次第ではまったく役に立たないケースもあります。
重要なのは、「どこで誰を特定したいのか」を明確にし、必要なPPMを確保できる設計にすること。そして録画設定や夜間性能といった、画質以外の要素も含めて総合的に判断することです。
これから防犯カメラを選ぶ際は、カタログの数字に惑わされず、実際の設置条件に合った選択をしてください。

